はてなDiaryから移行してみました。
記事一覧

人によっては「夏かし」と呼ばれているものです。

伊坂幸太郎「重力ピエロ」をよんで  (おそらく、その一)

「重力ピエロ」を読んで気に入りました。理由は、(1)登場人物を介して伝わってくる著者のものの考え方に、自分と近いものを感じること、(2)魅力的な登場人物がいること、(3)アイテム?の使い方などがしゃれていること、です。以下、物語の概要を書いてから具体的に色々と書いていくことにします。

主人公は、泉水(いずみ)と言う名前であり、遺伝子診断のようなことをする会社「ジーン・コーポレーション」に勤めています。泉水には春(はる)という弟がいます。二人が住む街である仙台では、最近、落書きが増えています。春は絵の才能があるのですが、小学生の時に起きたあるできごとのことが影響したためか、それを生かした道には進んでいません。今は、落書きを消すことをしています。二人の父はがん患者で入院しており、母はすでに死んでいます。実は、春は「父」の子供ではありません、母が不幸な事件により身ごもった子供なのです。事件のことが、春の人格形成に大きな影響を与えているようです。
仙台では軽度の放火が起きており、春によるとこの2つには関連性があるとのことです。このことに興味を持った泉水と、春が放火犯の現場を押さえようとすることを中心にしてこの物語は進行していきます。
この他の主な登場人物としては、葛城、郷田順子、探偵の黒澤がいます。その他に、泉水の回想では、夏子さんという春のストーカーが出てきます。葛城は、「ジーン・コーポレーション」の客として登場します。売春に関係している仕事をしており、価値観もそれなりなのですが、ある意味で一貫している価値観を持っています。郷田順子は、「日本文化会館管理団体」という団体の一人として泉水の前に現れます。なにやら、春のことを調査しているようですが、その目的と称していることついては明確でないところがあります。
登場人物が少ないので、郷田順子の正体、放火と落書きの犯人、葛城と兄弟との関係性、については、物語においてそれが明らかになる前に、多くの読者が気づくと思います。ただ、それが分かってしまうことは織り込み済みで著者は物語を書いているようであり、また、それが分かってしまうことにより物語の面白さが損なわれるわけではありません。

この物語における魅力的な人物は、「母」、「父」と探偵の黒澤です。その中でも印象的なのは兄の回想に出てくる「母」です。「母」が「父」を見染めて、「父」の仕事場である市役所に乗り込んでくるシーンは面白いのです。でも、それより印象的なのは、競馬場に二人の子供を連れて行った「母」がある人物と競馬で対決をするシーンです。「母」は出走馬のリストにおいて二人の子供の名前に関連する馬を選んで賭けることにより勝利をお納めます。しかし、それはリストにある馬の一部しか見ていなかったから勝つことができる連番を指定することができたのであり、リストの全部を見ていたらば違う選択をしたということが判明します。全ての情報を使うのではなく、目に入った情報だけをもとに行動する方が合っていることがあるというのは実際にもありがちですし、また、直感に優れている人はそんな感じであることが多いと感じています。
(続くかも…)