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人によっては「夏かし」と呼ばれているものです。

読書メモ:「グラスホッパー」「チルドレン」「オーデュポンの祈り」

伊坂幸太郎の小説を3冊読みました。忘れないようにメモに残しておきます。
なお、私は、今回記述した3つの小説の中で「チルドレン」が一番好きです。私は、人が死ぬ話は好きではないからです。そして、人物が上手く描かれている小説が好きだからです。

【本の背表紙にあるあらすじ】
「復讐を横 取りされた。嘘?」元教師の鈴木は、妻を殺した男が車に轢かれる瞬間を目撃する。どうやら「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。鈴木は正体を探るため、彼の後を追う。一方、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの若者・蝉も「押し屋」を追い始める。それぞれの思惑のもとに―「鈴木」「鯨」「蝉」、三人の 思いが交錯するとき、物語は唸りをあげて動き出す。疾走感溢れる筆致で綴られた、分類不能の「殺し屋」小説。

あまりにも沢山の殺人が起こされるという意味では、この小説は私の好みではありません。

ただ、人を自殺に追い込む力をもつ殺し屋である「鯨」の設定は面白いです。それから、殺す相手が男でも女でも子供でも、区別なく殺人を引き受ける「蝉」という設定をした作者のもの考え方には共感をできます。殺人や、事故で亡くなった人がいる時に、被害者がどんな人でも私は罪に軽重はないと私は思っているからです。殺された人が数日後に結婚式、入学式、誕生日を控えていることを報道して事件の悲惨さを伝えようと考えるマスコミの姿勢を、私は好ましく思っていません。これは、ワイドショウ的な見地で被害者を扱っているにすぎません。そういう意味において、殺す相手が誰であり同じであるとみなす「蝉」の設定をした作者には好感を持ちます。なお、同じような価値観は同じ作者の「重力ピエロ」にも流れています。

最後の結末に収束されていく話の作り方は好きです。

  • 「チルドレン」

【本の背表紙にあるあらすじ】
「俺たちは奇跡を起こすんだ」独自の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに引き込むが、なぜか憎めない男、陣内。彼を中心にして起こる不思議な事件の 数々―。何気ない日常に起こった五つの物語が、一つになったとき、予想もしない奇跡が降り注ぐ。ちょっとファニーで、心温まる連作短編の傑作。

「なぜか憎めない男」である陣内の周辺の人に焦点を当てて5つの物語が描かれます。第一話「バンク」では、銀行強盗に巻き込まれた陣内とその友人の鴨居が、同じく人質となった盲目の青年・長瀬と出会うことを鴨居の目を通して描いています。第2話「チルドレン」、第4話「チルドレンII」では、家庭裁判所の家裁調査官となった陣内の後輩が主人公になります。彼が取り扱うことになる少年・志朗の件が、陣内による妙なアシストにより決着する様が、「チルドレン」では描かれます。第3話「レトリバー」は長瀬の恋人の優子、第5話は長瀬の視線で陣内に関するエピソードが語られます。
私は、長瀬と優子、そして、第2話で登場した志朗の描かれ方が好きです。

  • 「オーデュポンの祈り」

【本の背表紙にあるあらすじ】
コンビに強盗に失敗し闘争していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島”には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「しまの法律として」殺人を許された男、人語操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭 を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止できなかったのか?

話には面白さを感じませんでした。登場人物の城山のような残酷な犯罪を行う人間を描くこと自体が私としては好きではないです。全456ページのうちの最初の200ページは前から読みましたが、後は、最後の方から前に向かって読みました。この小説を通して読者に伝えたいことが分かりませんし、後味が良い小説でもありません。また、魅力的な人物もいません。話の舞台である萩島の設定にもそれほど面白みを感じませんでした。
唯一面白いと思ったのは、島において殺人を許された人物である“桜”という人物の設定です。このくらいの犯罪ならばこのくらいの罪になるということを計算して起こすようなこの世の中においては、現在の犯罪を罰する制度はあまりにも無力です。そのような世の中にいる私にとっては、“桜”のような存在を許容している点においては、この小説の世界は好ましいと思いました。