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人によっては「夏かし」と呼ばれているものです。

「死者の精度」(伊坂幸太郎)について

家の中でしばらくの間 失踪していた「死者の精度」(伊坂幸太郎)を見つけたので、再びいなくならないうちに書くことにします。
私の手にしている文春文庫のものは、6つの短編からなっています。そして、全ての話の主人公は死神です。伊坂幸太郎の紡ぐ世界では、死神は、死ぬことが予定されている人間に予定日の一週間前から接触し調査をします。そして、彼がその人物が死ぬことにOK出すと、その人間は死ぬことになることになっています。なお、死神は、調査対象に接触するのにふさわしい、容姿、年齢に身を変えて仕事をします。

主人公である死神は長い間、人間とかかわってきているので、人間についての理解はあります。しかし、死神ですから人間と物事の認識のしかたに違いがあります。これは、缶コーヒーのBOSSのCMに出てくる宇宙人のジョーンズ(トミー・リー・ジョーンズ)の感覚が、長い間地球に住みながらも地球の人とは違うのと同じような感じです。

死神が持つ私たちとはギャップのある視点により、私たちが当然であると思っていることについての見解が述べられることが面白いです。

6つの話のタイトルは以下の通りです。

  • 「死者の精度」
  • 「死神と藤田」
  • 「吹雪に死神」
  • 「恋愛に死神」
  • 「旅路に死神」
  • 「死神対老女」

この内、「旅路に死神」だけが80ページであり、その他の5話は約50ページです。「旅路に死神」は少し冗長だと感じましたが、他は50ページの尺で上手くまとまっています。この中で私が気に入ったのは、「死者の精度」、「恋愛に死神」、「死神対老女」です。



「死者の精度」では死神が救った女性の未来が知りたくなり、「恋愛に死神」では青年の女性への思いに惹かれるものがありました。そして、死神が正体を知られてしまう「死神対老女」は、この短編集を締めくくるのによい作品になっています。