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人によっては「夏かし」と呼ばれているものです。

「新聞を読んでいる人は91・3%」(日本新聞協会の調査)という新聞報道は、一般読者ではなく広告主を念頭に置いたものであると感じたこと

「新聞を読んでいる人は91・3%」という日本新聞協会の調査結果について、多くの新聞が6/8の朝刊で報じました。91・3%という高い数字には、違和感をもたれた方が少なくなかったようで、その違和感をネットで表明する人がかなりいらっしゃいました。

『「新聞離れ」ウソだった? 「読む91%」に違和感の声も』
              J-Cast(2010/6/ 8 20:27)
新聞を読んでいる人は91.3%――そんな調査結果の報道に対し、「そんなにたくさんいるのかな」との素朴な疑問の声も挙がっている。読者の「新聞離れ」が指摘されているが、それは虚像で実は新聞は「安泰」なのだろうか。
2010年6月8日の全国紙朝刊各紙に、日本新聞協会が7日に発表した「全国メディア接触・評価調査」の記事が載った。見出し(東京最終版)を見ると、「『新聞読んでいる』91.3% 協会調査」(読売)、「『新聞を読む』91.3%」(朝日)などと報じている。

「新聞離れ」ウソだった? 「読む91%」に違和感の声も : J-CASTニュース

もし、この調査が、新聞社の関係でない第3者の機関から発表されたのならば素直に受けとめた人でも、日本新聞協会の調査だと知ると、胡散臭く感じてしまうのは、ごく普通の感覚のように私は思います。しかし、もしかしたらば、違和感を感じる源泉が、日本新聞協会の調査結果ではなく、新聞社による報道の仕方である可能性がありますので、日本新聞協会のサイトにあった今回の調査報告書を読んでみることにしました。

この調査の目的は、調査のタイトルからは分かりにくいので、目次を書き下してみます。

  1. ベースメディアと購買行動
    1. 生活者とベースメディア
    2. 購買行動と「満足・情報共有」
    3. 企業・官庁・自治体などの情報源
  2. 主要5メディアと新聞
    1. メディア接触と評価から見た新聞
    2. 広告メディアとしての新聞
    3. 企業・官庁・自治体などの情報源
  3. 新聞接触の基礎デー
    • 回読人数、宅配制度の必要性
    • 購読年数、有用期間
    • 閲読時間
    • 閲読時間帯、閲読場所
    • 閲読記事ジャンル
    • 閲読頻度、閲読開始面
  4. 各メディアの接触状況、印象・評価
    • メディア別接触頻度
    • メディア別1日あたりの接触時間
    • メディア別広告接触態度
    • 各メディアの印象・評価
    • 各メディアの広告への印象・評価
    • インターネットの利用状況

目次から推測すると、この調査の目的は、新聞の広告主に対して、新聞は広告を出す価値があるメディアであることをアピールすることであるようです。そして、そのアピールが、メディアとしての存在感が増えてきているインターネットを意識して行われているようです。また、上のリストでは省略していますが、1.1の「生活者とベースメディア」に、「『検索バカ』と新聞」というコラムがあります。これが象徴しているように客観的ではない記述が存在します。このようなことが、新聞報道ではごそっと抜け落ちており、中立的な調査報告のように書かれています。
新聞における報道のされ方はおいておいて、せっかく行われた調査ですから、まじめにみていこうと思います。


この調査は、訪問留め置き法*1というやり方で行われました。6000人を調査対象にして、3,683人(61.4%)の回答を回収しています。質問項目が多いようですから、時間に余裕があり、新聞協会が象徴する新聞に好意的な人の回答をより多く回収することになったのではないかと思います。回収率を年代別に見てみると、高い年代では比較的に高く、低い年齢では比較的に低いです。60歳代の回収率は67.40%(856/1270)であるのに対して、20歳代の回収率は48.93%(434/887)となっています。したがって、約18.5%の違いがあります。新聞協会は恣意的ではなかったと思いますが、結果的に、新聞購読者が多い高年齢の方の数値に重みがある調査結果となっています。


調査では、各メディアの利用度を3つ指標で示しています。(1)各メディアに接触している人の割合、(2)1週間の平均接触日数、(3)1日あたりの接触時間 です。これらの数値を、テレビ、新聞、雑誌、インターネット、ラジオの5つのメディアに対して出しているのですが、ここでは、テレビ、新聞、インターネットについてのみ記載します。

まず、接触している人の割合は、99.0%(テレビ)、91.3%(新聞)、66.7%(インターネット)です。新聞における91.3%という数値は高すぎるように感じましたが、この調査に回答された方(3683/6000)ではそういう数値になったということだと思います。なお、インターネットにおける66.7%という数値は私の予想よりは多かったです。
接触している人の割合は、新聞においては年代が高くなると増え、インターネットにおいては年代が高くなると減ります。両者に接触する割合がほぼ同じなのが30歳台であり、88.3%(新聞)、88.2%(インターネット)でした。

次に、1週間の平均接触日数は、6.6日(テレビ)、5.2日(新聞の朝刊)、3.0日(ウエブの閲覧)でした。ウエブの閲覧における3.0日という数値は、テレビや朝刊の数値よりは低いですが、ウエブサイトを見ない人も含めた平均なのでしょうから、妥当な数値のように思います。

最後に、1日あたりの接触時間ですが、テレビにおいては199.3分、ウエブの閲覧63.3分です。新聞おいての数値は両者よりも少ないです。24.8分(朝刊、平日)、29.1分(朝刊、休日)、14.9分(夕刊)なので、朝刊と夕刊を合わせて41分くらいだと思います。


今回の調査を、その二年前に行われた調査と比べると、どの指標においても、ほとんどの場合、テレビと新聞における数値は減っており、インターネットにおける数値は増えています。
メディアが利用されている度合いは、利用時間で計るのが妥当だと思いますから、一般の人にとっては1日あたりの接触時間が一番興味がある指標だと推測します。この指標の2年間の変化を記載します。ウエブの閲覧時間は、2年間の間に、55.2分から、63.3分に増えています。これに対して、新聞の閲覧時間(朝刊〔平日〕)は25.1分から24.8分に減り、テレビの視聴時間は203.4分から199.3分に減っています。ウエブの閲覧時間は、15%弱増えたのに対して、新聞の閲覧時間とテレビの視聴時間は少しだけれども着実に減っています。

新聞協会の報告書や、新聞報道で注視している指標は、メディアに接触している人の割合でした。おそらく、新聞に掲載される広告や、宅配される新聞への折込広告から収入を得るために有用な指標は、新聞の閲覧時間よりも、接触している人の割合だからだと推測します。新聞は、一般読者が知りたいことより、新聞が広告主にが主張したいことを記事にしたのではないかと思います。
ついでですから、各メディアに接触している人の割合の変化を記載しておきます。2年間の間に、テレビにおいては99.1%から99.0%に減り、新聞においては、92.3%から91.3%に減っているのに対して、インターネットにおいては、63.3%から66.7%に増えています。インターネットを利用するためには、パソコンを買い、使い方を覚えなくてはならないという制約がありますが、接触している人が増える“のびしろ”は、まだまだ存在しているように考えます。

*1:調査員が対象者宅を訪ねて調査票を渡した後、一定期間を経てから再訪問し、記入された調査票を回収する