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人によっては「夏かし」と呼ばれているものです。

難ありドラマとして始まった朝ドラ「てっぱん」が、こなれてきた件 -- 「てっぱん」(第1−4週)のまとめ --

NHKの朝ドラ「てっぱん」(NHK大阪放送局制作)が、9月27日から始まりました。ドラマの舞台は尾道と大阪です。現時点では、面白いドラマだと思っています。
私は、この朝ドラを観る予定はなかったのですが、覗くようになったのは、第2週の途中で番宣を観てしまった際に、主人公・村上あかり(瀧本美織)の友人である篠宮加奈を演じているのが朝倉あきさんだということがわかったからです*1。そして、第3週から、ほぼ毎日、「てっぱん」を観ることになったのは、あかりの実の母親の千春(あかりを産んで間もなく死亡)を演じるのが木南晴夏さんであり、あかりと木南晴夏さんがよく似ていることに気がついたからです。あかりを見るたびに似ているなぁと感心します。


てっぱん」の第1週と第2週の内容は以下のとおりです。吹奏楽部でトランペットを担当している尾道市の高校3年生・村上あかねは、海にトランペットを投げ込む女性(富司純子)を目撃します。このトランペットを、あかりは、海に飛び込んで救出します。その夜、その女性は、家出してから会っていない娘の千春(木南晴夏)を訪ねて、あかりの父・錠(遠藤憲一)が営む村上鉄工所を訪ねてきます。あかりの母の真知子(安田成美)は、千春が出産後に間もなく亡くなったことを、その女性・田中初音に告げます。あかりは、自分が錠と真知子の実の子供ではないことを初めて知り、さらに、田中初音(富司純子)の孫であることも知ります。
その後、あかりは、トランペットを返しに、大阪に住む初音を訪ねます。妙なめぐり合わせで、ライブ会場でトランペットのピンチヒッターを務めることになった“あかり”は、その際に、自称モデルである西尾冬美(ともさかりえ)と、かつお節会社・浜勝の社長・浜野(趙萊和)に出会います。ここまでが第1週であり、第2週は、あかりが就職のために大阪へ出発する所までが描かれます。強引な展開ですね。

ご都合主義の展開は、私がドラマを見始めた第3週も続きます。あかりが、入社当日に会社に行くと、倒産したという通知が貼られていました。就職するはずの会社がなくなり、住むところも決まっていなかった“あかり”は、必死に職を探し、結局、例のかつお節会社・浜勝に雇ってもらうことになります。
住むところが決まっていないと採用できないということで、あかりは、かつお節削り職人・神田(赤井英和)に下宿屋を紹介してもらいます。で、その下宿屋というのが、初音の営む下宿屋・田中荘でした。大いなるご都合主義です。空いている部屋はなかったのですが、あかりは、初音のことを「おばぁちゃん」ではなく、「大家さん」とよぶことを条件に、間借りすることを許されます。初音があかりに対して、やや冷たく、他人行儀に接するのは、千春が家を出ていた後、初音が心を開かなくなったためもあるでしょうが、あかりの育ての親に配慮しているということもあるようです。
田中荘には、「開かずの間」があり、この部屋を偶然にあけてしまったあかりは、この部屋が、「ちはる」という店名で営まれていたお好み屋であることを知ります。第3週の最後には、父親の錠が、あかりを尾道に連れ戻すために、真知子と共に田中荘にやってきます。で、結局、あかりが大阪に逗まることが許されるところで第3週は終わります。


私は、普段いくつかのドラマをレビューするサイトを見ているのですが、「てっぱん」の第1週と第2週の評判は著しく悪かったです。毎クール、何本ものドラマを観ているレビューサイトの中の人は、「ドラマ」を評価対象として観ていると思います。そのような観点で見ると、このドラマがドラマとして上手く成立していないと見えたのは無理もないと私は思います。私の知る限り、唯一、肯定的な評価を与えていたのは、「最近、seesaaに移動した私評サイト」だけでした。このサイトの中の人は、ドラマはほとんど朝ドラしか観ないようで、また、ドラマに触発されて文章を書く事を趣旨としているようなので、ドラマとして上手く成立していなくても、世界観を受け入れられればOKとするようです。なお、私は、それも一つの見識かと思います。

第3週の前半を観た私は、予期していたものの、あまりのご都合主義の展開に、笑うしかないという状態でした。荷物を詰め込んだキャリーバックを引きずって会社にやってきたあかりが張り紙を読む場面では、結局、あかねは初音と住むことになると推測したのですが、これほどあからさまなご都合主義が展開されることまでは予想できませんでした。あかりが、「開かずの間」を開けた第15話は、私は観ていないのですが、おそらく、最大級のご都合主義が発揮されて、「開かずの間」が開かれることになったのではないかと、推測します。
で、この第15話で、あかりと初音が将来、お好み焼き屋を営むことになるとことを示唆することができたために、制作者に余裕ができたきたのかもしれませんが、これ以降は、ドラマがこなれてきたという印象を持っています。第3週の最後は、両親と共に尾道に戻ることになったあかりを、千春の時と同じ失敗を繰り返したくないと思った初音が追いかけ、結局、あかねが大阪に逗まることを決める場面でした。この際に、錠があかねに言った「許さんぞ」という言葉の意味が、生半可なことで尾道に戻ってきたらば許さないという意味であることは予想通りでした。ドラマの教科書に描いてあるようなお決まりのセリフです。これまででしたらば、いかがなものかと思ったかもしれませんが、受け入れられるような雰囲気の描写になっていました。私が、このドラマに慣れてきたということもあるかもしれませんが..。

第4週は、田中荘の住人の間に交流がないことを気にしていた“あかり”が、小学生の民男(前田航基)の誕生会を開くために奔走します。実際に、大阪城の周りも走ります。最終的に、田中荘の全員、つまり、初音と“あかり”と冬美、民生とその父の中岡(松尾諭)、笹井(神戸浩)、駅伝選手の滝沢(長田成哉)〔冬美に「駅伝くん」と呼ばれています〕が参加する誕生会が開かれます。そして、初音が特別料理として出したのは、民生の好物のグラタンでした。初音は、下宿人のことに関心がないように振舞っていますが、実は、よく見ているということだと思います。ドラマの最後は、下宿に来てから初音に配慮してトランペットを吹こうとしなかったあかりが、川原でトランペットを吹くシーンで終わります。これを見て、あかねのことを見直す滝沢が映される場面があるのですが、二人にはお約束の未来があるのでしょうね。
第4週では、父親の久太(柳沢慎吾)に無理やり見合いを決められたことを嫌って、あかりの友達の加奈(朝倉あき)が田中荘にやってきます。あかりを演じる瀧本美織さんの演技は予想以上に良いのですが、あかりと加奈が話す場面を見ると、朝倉あきさんの方に一日の長があるように見えます。さて、このドラマにおける最大の違和感は、あかねの父の久太を柳沢慎吾さんが演じていることです。100万年くらい先祖帰りした顔立ちの柳沢慎吾さんの娘として、東宝芸能のプリンセスである朝倉あきさんが生まれるとは思えません。
このドラマは、あかりの実の母親に顔立ちの似ている木南晴夏さんを配し、育ての母の真知子に、あかりとは顔の系列が違う安田成美さんを配しているところなどは、良く考えていると思うのですが、外すところは確信犯的に外しているような気がしています。なお、久太と同様に錠(遠藤憲一)の友達である僧侶の横山隆円は、尾道を舞台としたドラマに沢山出演している尾美としのりさんが演じています。


冒頭にも書きましたが、現時点では、このドラマを楽しめています。強面の遠藤憲一さんが、娘である“あかり”を深く愛する父親をややコミカルに演じることを演じることに驚いた人もいると思いますが、「白い春」(2009.4-6、4−6月)で演じた“村上”を知っている私はそれ程の驚きはありませんでした。さち(大橋のぞみ)の育ての父である村上と、さちの実の父である春男(阿部寛)とが張り合う姿はコミカルで面白かったです。「てっぱん」においても、あかりの育ての父である“村上”を演じており、実の祖母である初音と張り合っているのですから、面白いです。
それから、安田成美さんの母親役は面白いです。安田成美さんにはクセのあるところがあるのですが、それが上手く生きています。
で、最高にいいのは富司純子さんが演じる初音ですね。ひと癖あるけれども筋が通っていて、実は“あかり”のことをしっかり見守っています。初音という名前の設定もいいです。初音(はつね)の由来については、新青森行きの東北新幹線の名称が決まった際の記事でも触れたのですが、春の訪れを象徴する鶯の声に関係しています。音楽には関係がないけれど「音」という漢字を含む初音という名前の人が、初音という言葉が象徴する「春」を含む名前である千春という娘にトランペットを買い与え、それが孫に受け継がれて、奏でられるわけですね。図として面白いです。

はつね 【初音】
鳥の、その季節に初めて鳴く声。特に、鶯(うぐいす)についていう。[季]春。《この里の通りすがりの―かな/山口青邨


今回、文章の中で取り上げなかった登場人物は、以下の人達です。
尾道の住人】村上欽也(あかりの長兄:遠藤要)、村上鉄平(あかりの次兄:森田直幸)、篠宮芳江(加奈の母:久野麻子)、島田先生(あかりの担任、吹奏楽部の顧問:おかやまはじめ
【大阪の住人】長谷川伝(工務店の人、初音の古くからの知り合い:竜雷太)、松下小夜子(浜勝の事務員:川中美幸)、岩崎潤(音大の講師、商店街のバンドの指導者:柏原収史)、根本孝志(駅伝チームのコーチ:松田悟志

*1:朝倉あきさんは、NHKドラマでは、「とめはねっ! 鈴里高校書道部」(2010.1-2)において、主人公の望月結希を好演していました。