はてなDiaryから移行してみました。
記事一覧

人によっては「夏かし」と呼ばれているものです。

「被災の沿岸7路線、復旧に1000億円…JR東」という読売新聞の記事に違和感を感じて、各路線の営業係数を調べたこと

被災の沿岸7路線、復旧に1000億円…JR東」という読売新聞の記事に違和感を感じました。

被災の沿岸7路線、復旧に1000億円…JR東」
      読売新聞(2011年7月5日19時49分 読売新聞)

JR東日本の清野智社長は5日の定例記者会見で、東日本大震災で大きな被害を受けた沿岸部の在来線について「地震前の状況に戻すのに1000億円強かかる」と述べ、早期復旧に向けた政府支援の必要性を改めてにじませた。
 高台などに路線を変更する場合には「さらに金額が増える」(清野社長)とみている。
 津波の被害を受けた在来線常磐線仙石線石巻線気仙沼線大船渡線、山田線、八戸線の7路線で、現在も延べ約350キロで運転を見合わせている。
 沿線自治体は線路を内陸部に移すことを含めた新たな街づくりを議論している。路線を変更すれば、新たな用地買収やトンネル建設などが必要になる。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20110705-OYT1T00917.htm

 東日本大震災は莫大な被害をもたらしました。日本の国が大金持ちならば、全てを震災以前のように復旧することが、政府のお金だけでできると思います。しかし、実際にはそうではありません。したがって、復興への優先順位付けを行い、優先順位の高いものから資金が投入されることが必要になると思います。また、JR東日本のようなお金持ち*1の会社には政府の支援は行われにくくなります。それから、鉄道の場合には、多額の資金を使って赤字路線を復旧することの是非が絡んできます。この辺のことが読売新聞の記事からは見えてこないというのが、私の感じた違和感でした。


実は、この清野社長(JR東日本)の定例会見における発言は、国土交通省による「東日本大震災で甚大な被害を受けた鉄道の復旧・復興支援策」の発表(7/3)に応じる形で行われたもののようです。このことは、以下の、岩手日報の記事を読むとわかります。読売新聞の記事(ネット)において、この記事か、読売新聞の該当記事へリンクを張ってくれればよかったのですけどね...。

「 JR被災線、国支援へ ルート変更し用地取得に補助」
    岩手日報(2011.7.4)
国土交通省東日本大震災で甚大な被害を受けた鉄道の復旧・復興支援策をまとめた。本県の大船渡線、山田線など沿岸部を走るJRの7路線は、ルートを変更し復興を目指す場合、新たな鉄道用地の取得を支援する。三陸鉄道など10前後の事業者については、復旧費用の国庫補助率を現行の4分の1から4分の3程度に引き上げを検討する。
 JRの7路線は青森県から福島県にかけての八戸、山田、大船渡気仙沼石巻、仙石、常磐の各線。計344キロの区間が運休のままで、大部分で再開のめどが立っていない。国交省は、運営するJR東日本の経営基盤が安定しているとし、復旧費は自助努力が基本と位置付けた。

 ただ、駅舎や線路が流失するなど壊滅的被害を受けたため、まちづくりとともにルートを選定し直す必要もあり、区画整理などの事業を支援する方針。地元自治体やJR東日本と協議を進め、詳細な支援策を決める。

 三鉄は北リアス線の久慈−陸中野田間と宮古−小本間で運転を再開したが、南リアス線全線を含む路線総延長約107キロのうち66%が復旧していない。自力復旧は困難で、復旧には最大180億円程度かかるとの試算もあり、国に全面的な財政支援を求めている。

DOMAIN ERROR

岩手日報の記事によると、国土交通省は、三陸鉄道(略称は、三鉄)と違って、JR東日本は経営基盤が安定しているという理由で、復興には国を頼らないでほしいと考えているようです。そして、これに反論したのがJR東日本の清野社長による発言であり、地震前の状況に戻すのに1000億円強かかるので、政府の支援が必要だという主張でした。
私としては、国は東北新幹線新青森までに延長するために莫大な予算を使ったのだから、これ以上JR東日本のために予算を割く余裕はないような気がするのですけどね...。


さて、上では「多額の資金を使って赤字路線を復旧することの是非」と書きましたので、東日本大震災の被害から完全には普及していないJR7路線(八戸、山田、大船渡気仙沼石巻、仙石、常磐)の採算を見ていこうと思います。
週刊 東洋経済 増刊 鉄道完全解明2011 2011年 7/8号 [雑誌]
鉄道の路線の採算を示す指標として営業係数というものがあります。これは100円の収入を得るために必要な経費です。営業係数が100以下の路線が黒字、100以上の路線が赤字となります。現在は、週間東洋経済という雑誌が毎年発表しているようです*2。「週刊 東洋経済 増刊 鉄道完全解明2011 2011年 7/8号」には、2008年度の営業係数が掲載されています。
これを見ると、JR東日本では、東京周辺の路線(山手線、赤羽線東海道線横浜線、総武線など)や、東北新幹線上越新幹線の黒字(全20路線)で、残りの50路線の赤字を補填していることがわかります。三陸鉄道とJR7路線の営業係数を以下に示します。

路線など 営業係数
三陸鉄道 143.8
山田線 338.6
大船渡線 318.3
気仙沼線 311.2
八戸線 302.1
石巻線 277.5
仙石線 105.9
常磐線 74.3
JR東日本全体 82.4
名松線(JRで最悪) 534.4
東海道新幹線(JRで最低) 53.3
岩泉線JR東日本で最高) 361.5
山手線(JR東日本で最低) 57.7

JR7路線の中で、八戸線、山田線、大船渡線気仙沼線石巻線の5路線の営業収支は極めて高く、三陸鉄道のほぼ2倍以上になっています。この中で、山田線[338.6]は、岩泉線[361.5]、只見線[338.8]についでワースト3に入っています。山田線は盛岡駅と釜石駅を宮古駅を経由して結ぶ路線であり、ワースト1である岩泉線は山田線の途中駅である茂市駅と岩泉駅を結ぶ路線です。なお、岩泉線は、2010年7月31日に起きた列車脱線事故以来、普通になっています。この他、大船渡線[318.3]はワースト9位、気仙沼線[311.2]はワースト12位、八戸線[302.1]はワースト14位となっています。

これらの7路線の復旧をJR東日本の独力で行うことができずに、国の援助を求めるならば、極めて採算の悪い5路線と他の2路線(常磐線仙石線)は分けて考える必要があると思います。


なお、常磐線の営業係数が74.3と低いのは、採算が高い関東地方が含まれているからです。常磐線(関東地方)と常磐線(東北地方)と二つに分けたならば、常磐線(東北地方)の営業係数は150よりも大きいのではないかと推測します。仙石線の営業係数が105.9*3と、ほぼ100に近いのは、仙台近郊の部分が占める部分が大きいからだと推測します。

*1:例えば、三陸鉄道との比較です。

*2:JR民営化の前はJR自身が発表していたようですが、民営化以降は発表していません。

*3:内房線の営業係数(106.3)と同じレベル