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人によっては「夏かし」と呼ばれているものです。

首都直下型地震の震度予測の発表について、研究プロジェクトの「総括成果報告書」を見てようやく把握ができた件

以下の記事にも書きましたが、最近、地震予測の発表が2つありました。一つは、首都直下型地震、もう一つは、南海トラフ地震に関してです。

この記事を書いた時点では、首都直下型地震の震度予測について、何で発表されたかが分からなかったのですが、該当研究プロジェクトの「総括成果報告書」を見ることにより、把握できたので記します。なお、厳密さには欠けますことを御承知ください。


文部省のお金で行われた研究プロジェクト「首都直下地震防災・減災特別プロジェクト」が、平成19年度から平成23年度まで行われたそうです。つまり、3月31日で期間が終わったわけです。

この研究プロジェクトについての「最終成果報告会」が3月8日(木)に行われて、総括成果報告書も作られました。

この研究プロジェクトには、以下の3つのサブプロジェクトがあります。

  1. 首都圏周辺でのプレート構造調査、震源断層モデル等の構築等に関する研究(東京大学地震研究所)
  2. 都市施設の耐震性評価・機能確保に関する研究(防災科学技術研究所
  3. 首都直下地震による社会の影響と復旧・復興の成果の概要(京都大学防災研究所)

この内、新聞各社が報道したのは、東京大学地震研究所が担当した「首都圏周辺でのプレート構造調査、震源断層モデル等の構築等に関する研究」に関するものです。このサブプロジェクトの研究代表者は、最近、マスコミで名前が出てくることが多い、平田直さんです。

このサブプロジェクトには4つの研究テーマがあります。

    1. 地震計を用いた自然地震観測によるプレート構造調査
    2. 制御震源を用いた地殻構造調査
    3. 歴史地震等の記録の収集、整理及び再評価
    4. 震源断層モデル等の構築

一番目と二番目の研究テーマにより分かったことは、フィリピン海プレートの上部境界が、東京湾北部付近の下では、中央防災会議のモデルより約10キロ浅いことです。この情報を基にして、4番目の研究テーマにおいて震源断層モデルを構築して、震度分布が予測されました。その結果が、報道されているわけです。

なお、4番目の研究テーマの成果は、研究テーマ責任者である纐纈一起さんの名義で、以下の報告書になっています。

これだけの前提知識を持って、毎日新聞、および、日本経済新聞の記事を読むと分かり易いと思います。ただ、両紙ともに、自分たちに興味があることしか書いていません。例えば、中央防災会議による震度予測では神奈川県中部に現れていた震度6弱の領域の一部が、今回は震度5強と試算されたことは、記載されていません。また、主観が入り込んでいますから、纐纈一起さんによる報告書を読むことがベストです。

「首都直下地震震度7、湾岸広範囲に 23区大半、6強−−文科省試算」
        毎日新聞(2012年3月31日)

 首都直下地震の想定見直しを進めてきた文部科学省の研究チームは30日、東京湾北部でマグニチュード(M)7・3の「東京湾北部地震」が発生した場合の揺れの強さを試算した新たな震度分布図を公表した。東京都区部千葉市周辺にかけての震源域のうち、県境の東京湾岸で地震が発生したと仮定した場合、東京都江戸川区江東区品川区大田区川崎市など広範囲で震度7の揺れが予想された。国は今後、「最大震度7」を念頭に首都圏の被害想定や防災対策を見直す方針。首都圏の各自治体にも見直しが迫られる。
 東京大地震研究所を主体とするチームは、首都圏296カ所に新設した地震計で地下構造を調査。その結果、地震を起こすプレート(岩板)境界が、国の中央防災会議の想定より5〜10キロ浅いことが分かった。同じ規模の地震なら、震源までの距離が近いほど揺れは強くなる。
 この結果を基に、東京湾北部に東西約63キロ、南北約31キロの震源域を設定。この中で、地震が始まる場所を(1)東京・千葉県境付近(2)千葉市周辺(3)東京23区西部の3パターンで震度分布を試算した。
 震度7の領域が最も広くなったのは、中央防災会議と同じ想定の(1)の場合で、横浜市や東京・多摩地域東部などでは従来の震度6弱が6強になった。
 (2)の場合でも、東京都の隅田川河口付近が震度7、(3)の場合には、隅田川河口付近に加えて川崎市なども震度7となった。
 今回の想定見直しにより、従来は最大震度6弱だった東京23区西側を含め、23区の大半が3パターンすべてで震度6強以上と予想された。
 チームの纐纈(こうけつ)一起東京大教授(応用地震学)は30日記者会見し、「多くの仮定に基づく試算なので、条件を変えると震度分布も大きく変わる。強い揺れが予測された地域だけ地震災害に備えれば良いのではない。南関東のどこでも直下地震の強い揺れに備えるべきだ」と強調。「試算の精度が甘い」ことを理由に、震度別の自治体名は公表しなかった。【比嘉洋、八田浩輔】

http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20120331ddm001040134000c.html

「東京・神奈川で震度7も 首都直下地震文科省試算 」
       日本経済新聞(2012/3/30 22:12)
文部科学省の「首都直下地震防災・減災特別プロジェクト」の研究チームは30日、首都直下で起こる東京湾北部地震の各地の揺れを再計算し、最新の震度分布地図を公表した。東京都江戸川区大田区の一部などに、震度7となる地域が現れた。2004年時に比べて震度が上方修正された地域では、古い木造建物の耐震診断や補強などの必要性が一層高まる。
新しい震度分布地図で震度7になった東京都江戸川区江東区大田区川崎市などの一部は、従来は最大でも震度6強だった。震度6強の地域も東京23区の大部分や横浜市川崎市千葉市などに広がり、面積で04年時の約2倍になった。
 今回、震度分布地図の作製を担当した東京大学地震研究所の纐纈一起教授は30日の記者会見で「計算結果はあくまで試算で数キロメートルの誤差を含む。市区町村レベルでの震度がどうなるかは公表しない」とコメントした。
首都直下プロジェクトは07〜11年度にかけ、首都圏の約300地点に地震計を設置。地震の震度や地震波の伝わり方から、首都圏の地下構造を分析した。日本が載る北米プレート(岩板)と、南から潜り込むフィリピン海プレートの境界面が、従来より約10キロメートル浅いことが分かった。
 マグニチュード(M)7.3が想定される東京湾北部地震は両プレートの境界面で起こるとされ、震源の深さも20〜30キロメートルと、従来より約10キロメートル浅く見直された。地震の規模が同じでも、南関東の広い範囲で想定震度が上ぶれした。

東京・神奈川で震度7も 首都直下地震で文科省試算 :日本経済新聞

それから、産経新聞には、今回の発表に関する気になることが書かれています。

「作成の東大教授「公表したくなかったが、強く指示された」」
   産経新聞(2012.3.30 19:46)
文科省は首都直下地震の震度分布を推定した地図を公表しながら、具体的な市区町村名は明言を避けた。作成に当たった東京大地震研究所の纐纈一起教授は「今回はあくまでも試算で、自治体が直接利用することを想定していない」。
 分布図は都県の境界を記した地図に、1平方キロごとに推定される震度を色で示している。記者会見で報道陣からは「自治体の問い合わせにも答えないのか」「国の予算を使った研究なのに、なぜ公表できないのか」などの質問が続出。纐纈教授は「精度が粗く都県までしか示せない。いくつもある想定地震の一部にすぎず、非常に多くの仮定を置いた推定で市区町村の震度を示すのはかえって危険だ」などと弁明を繰り返した。
 しかし、分布図では都県の境界付近などの「震度7」は、ほぼ市区町村まで特定が可能であることを問われると、纐纈教授は「本来は、私自身は公表したくなかったが、公表するよう強く指示された」と文科省の指示があったことを明かした。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120330/dst12033019480010-n1.htm

――以上――