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人によっては「夏かし」と呼ばれているものです。

14分で初回をリタイアした ドラマ「ビブリア古書堂の事件手帖」の原作を読んで、ドラマについて考えたこと

ビブリア古書堂の事件手帖」(フジテレビ、月9)については、初回(2013年1月14日)を14分観てから、観るのを止めたことを以下の記事に書きました。実は、第2回についても録画されていたものを少し覗いてみたのですが、途中で観ることを止めたことは同じです。

さて、この記事においても書きましたが、原作(三上延 著)については、立ち読みした際における感触は著しく好ましいものでした。で、今週になって購入して、ドラマの第1話と第2話に該当する話を読んでみました。原作は、予想をはるかに超えて面白かったです。

原作は、とにかく、文章が素晴らしいです。比喩を使うならば、芳醇な香りがして、その美味しさが十分に予想できるような果実のような感じです。そして、小説の本編を早く読みたくて、たまらない気持ちに私をさせました。
[中略]
(なお、私は現時点ではこの本を購入していません。購入すると3冊目まで直ぐに読みたくなってしまう可能性があるからです。)。

ドラマ「ビブリア古書堂の事件手帖」の初回を、14分でリタイアしたことについての考察 - 夏かしのブログ

原作は古書にまつわる物語です。北鎌倉にある古書店・ビブリア古書堂の主人・篠川栞子がヒロインであり、その店員となる五浦大輔が語り手を務めます。各話の話は、古書のタイトルになっており、その本に関する謎を篠川栞子が解き、五浦大輔が手助けをするということは事実です。しかしながら、謎を解くことがメインというわけではなく、謎解きを通して二人と、二人に関わってくる人達、そして鎌倉という土地がらを描く話だと私は認識しています。これに対して、ドラマでは謎解きがメインになっています。

古書の持ち主の謎を解くということに興味がある人は、普通はいません。しかし、原作では、読者が違和感を持たずに興味を持つようになるように、話を紡いでいきます。このことは、ドラマとは大きな違いがあります。ドラマにおいては、店に始めて訪れた五浦大輔が鑑定を依頼した本について、持ち主の謎に興味を持った店主の篠川栞子が、五浦大輔を延々と待たせるところから始まります。

原作におけるプロローグでは、高校生時代の五浦大輔が、いつもと違ってJR北鎌倉駅を経由して自宅(大船駅のそば)に帰る際に、ビブリア古書堂があることに気が付きます。そして、彼は、店で働く篠川栞子を見かけて、美少女である彼女に惹かれます。なお、彼女は店主でなかったと五浦大輔は(正しく)認識しています。

第1話に入ると、まず、本好きだった五浦大輔が本を読めない体質が語られます。それは、子供の頃に祖母の蔵書を勝手に見たことによって、キツく叱られたことが原因ということです。そして、祖母が亡くなる前に交わした本についての会話が描かれたます。この会話では、祖母は五浦大輔を叱ったことを詫びると共に、「お前はどんあ相手と結婚するんだろうね。」「本を好きな子と結婚すればいいかもしれないよ。」と、小説の展開を暗示させるようなことを話します。

この後、話は、五浦大輔が篠川栞子に惹かれてから6年後の現在に話は変わります。この時、五浦大輔は大学4年の2月になっています。就職がまだ決まっていない五浦大輔は、母親から、一周期を過ぎた祖母の遺品である書籍の処分に関する仕事を依頼されます。「漱石全集」に夏目漱石の署名らしきものがあるので、鑑定をしてもらってきて欲しいというのです。五浦大輔は、祖母がこの本をビブリア古書堂において買った可能性があると気づきます。このことが、彼が鑑定をしてもらう古書店としてビブリア古書堂を選んだ大きな理由ですが、もちろん、例の美少女に会えるかもしれないという期待もありました。

ビブリア古書堂に着いた五浦大輔は、店番をしていた女の子(篠川栞子の妹である文香)から、店主が入院していることを聞かされます。そして、文香の段取りにより、鑑定をしてもらうために、店主が入院している大船総合病院に向かいます。そこで彼が出会うのは、店主となっていた篠川栞子でした。

病室において篠川栞子は、ドラマとは違い、直ぐに鑑定結果を伝えます。夏目漱石の署名は偽物ということです。五浦大輔との会話の中で、篠川栞子は「漱石全集」の不自然さを指摘します。このことが、五浦大輔の出生の秘密を解き明かすことに繋がります。

これに対してドラマでは、篠川栞子(剛力彩芽)は、五浦大輔(AKIRA)が折り鶴を数十個も折れるほど待たせます。そして、彼が本の山を崩したことをキッカケに、ようやく彼を振り返ります。彼の問いかけに対して篠川栞子は、「偽物です。このサインは夏目漱石本人が書いたものではありません。それは直ぐに分かりわかりました。」と、ようやく鑑定結果を話し始めます。

篠川栞子は、帰ろうとする五浦大輔に対して、「重要なことは本物か偽物かではありません。私が気になっているのはもっと別のことなんです。」と語ります。そして、彼がこの時点では望まないのにもかかわらず、「おばあさま、このサインを書いたのは、おばあさまかもしれません。」と、自分のコダワリを話し始めます。


半月前のブログ記事に書いたように、現実にはこんな店主はありえないです。そして、この記事では、このようなありえない世界に視聴者の一人である私を巻き込めなかったのは、「役には力不足」だと書きました。しかしながら、若干違いがあったようです。原作における篠川栞子は、この意味においては「ありえない店主」ではないからです。ただ、私には思わせぶりにしか見えない剛力彩芽の演技を見ると、「役には力不足」だと、やはり感じます。

上にも書きましたように、原作には謎解きの他にも重要な要素があります。しかし、ドラマの脚本家は、原作から謎解き以外の大部分を消し去り、その代わりに、五浦大輔が鶴を折るような幾つかのことを加えています。そして、加えられたものは脚本家が面白いと考えて付け加えたものだと思います。しかしながら、私には鶴を折る場面が面白いとは思えませんでした。

このドラマにおいて私が違和感を持った部分は、全てドラマにおいて付け加えられたものでした。第2話(28分までは視聴)において大きな違和感を感じたものは、次の場面でした。

  • 五浦大輔が「落穂拾ひ」(小山清)を、志田のために他の古書店で探す場面
  • 篠川栞子と五浦大輔が喫茶店・CAFE甘庵において小菅奈緒を待つ場面
  • 小菅奈緒がビブリア古書堂を訪ねた際に、古本の値段を聞いて帰る小菅奈緒を引き止めるまでにおける篠川栞子の描写

CAFE甘庵については、店主(鈴木浩介)の描写がコミカルだと制作者は思っているのでしょうが、私は違和感を感じただけでした。CAFE甘庵は、店員を演じる女優さんを出演させるためだけの設定に見えました。


さて、実はこの文章を書く前に、録画してあった第1話と第2話の全てをすべて観ました(第3話は録画せず)。ドラマの制作者は、記号としての鎌倉を映しているように感じました。例えば、大船にある五浦大輔の家から、北鎌倉駅の側にあるビブリア古書堂に彼が向う際に、江ノ電*1が通る踏切を映すことなどです。

それから、やはりこのドラマを作る際の前提と主な目的は、剛力彩芽を主役にするドラマを作ることではなかったかと思いました。「ビブリア古書堂の事件手帖」が原作に選ばれたのは、知名度がある小説であったためだけあり、知名度があれば他の小説でも良かったのではないかと思いました。


−−−以上−−−

*1:江ノ電かどうかは確信が持てませんが、横須賀線でないことは確かです。