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人によっては「夏かし」と呼ばれているものです。

「密着!秋元康2160時間〜エンターテインメントは眠らない」を観て、AKB48の作品では作詞が最適化されているために、支障が起きているが分かったこと

BSプレミアムで放送された「密着!秋元康2160時間〜エンターテインメントは眠らない」(2013年2月11日 21〜23時)を観ました*1

番組で主に取り上げられたのは、AKB48の30枚目のシングル「So long !」(2013年2月20日発売)のカップリング曲(全4曲)の作成です。放送時間の6割くらいが該当しています。この記事において記するのは、この6割の部分についてです。


具体的な記述を始める前に、この番組を観る前における、AKB48の曲に対する私の印象を述べておきます。AKB48の曲は、作詞家の秋元康がプロデュースをしているためか、通常に想定されるレベル以上に、歌詞を重要視しているということが、私の印象でした。

このため、AKB48の曲は歌詞を伝える媒体に過ぎず、メンバーによる歌は楽器の一部に過ぎないという印象がありました。また、それらの楽器がどのパートを歌っているのかを、気にする必要を感じませんでした。このため、誰がセンターポジションで歌っているかにも、興味があまり湧きませんでした。

この私の直感は、この番組を観ることによって、正しかったことが分かりました。


あるプロジェクトを行うことを考えることにします。通常、プロジェクトは、複数の要素に分けることができます。どの要素も完璧な品質であることが理想なのですが、時間や費用の関係で不可能です。このため、プロジェクをまとめる人(プロジェクトリーダー)は、どの要素においても満足がいくレベルに達すれば、OKを出すのが通常だと思います。戦略として、ある要素を重要視する場合もありますが、他の要素に著しい支障が出ない程度に優先度を与えるのが通常だと思います。

しかしながら、このようなプロジェクトの鉄則が崩れることがあります。その部類の一つとして、ある要素を担当している人が、プロジェクトリーダーである場合があります。AKB48の場合は、これに当てはまります。プロジェクトリーダーは秋元康であり、彼が担当する要素は作詞です。


カップリング曲のPVを作る際に、秋元康は作詞に妥協をしません。可能な限り、その完成に自分でOKを出すことを引き伸ばします。他の要素が作詞によって影響を受けないのならば、何も問題はありません。しかしながら、メンバーへの歌のパートの割り振り、振り付け、PVのコンセプトやロケ地などは、歌詞の内容に大きく依存します。
結果として、メンバーへのパートの割り振りと、振り付けは限られた時間内で行なわれます。当然、最適に近いものにはならず、すれすれで合格を得るレベルになることもあると思います。

PVのコンセプト作りやロケ地などは、歌詞が作られていない時点で行なわれます。そして、締め切りギリギリで歌詞と共に送られてくる「仮歌」を聞いてから、選ばれていたロケ地の制約の中で、現実的な解を探すことになります。当然、PVのスタッフの技量を最大限に活かしたものになることは、稀だと思います。

なお、「仮歌」とは、メンバー以外の歌手によって吹き込まれる曲です。これを元にして作られるPVにおいては、メンバーはこれに合わせて口パクを行います。高い品質のPVが望めないことは明らかです。


この番組によって分かったことは、AKB48におけるカップリング曲のPV作りは、作詞以外の要素を担当する人の才能と時間を無駄遣いするものだということです。AKB48のメンバーは外部の世界を知らないので、このPV作りに大きな疑問を持たないのかもしれません。しかし、PV作りの監督やスタッフは、外部のことを知っているバズです。

彼らには、AKB48のメンバーとは違って、仕事を受けないという選択肢があるはずです。それにもかかわらず、彼らが仕事を受けているということから、彼らとっては魅力的な仕事なのだと推測されます。なお、仕事をすること自体が魅力的なことなのか、仕事をしたことが評価されることが魅力的なのかは、私には分かりません。

今回の番組で明らかになったのは、AKB48におけるCDのカップリング曲のPV作成のあり方です。おそらく、CDの表題曲の場合には、これよりは良い状況で作られるのだと思います。番組に登場した高橋栄樹監督によると、29枚目のシングル「永遠プレッシャー」のMVの撮影では、オファーを受けてから撮影まで6日あったようなので、比較的に良い状況で作成されたことになります。しかしながら、業界の常識としては、厳しいスケジュールであったことは間違いがありません。


最近のAKB48グループに関して感じることは、このプロジェクトは破綻しつつあるのではないかということでした。その原因は、秋元康が多忙であると推測していました。この番組を観ることにより、彼の多忙によって実際に支障が起きていることを確信できました。

例えば、河西智美に関して起きた二つの問題(黄金伝説バックレ事件、手ぶら写真事件)は、彼女に大きなチャンスを与えたものの、秋元康の彼女に対する関心が薄いことにより生まれたことのように見えます。この件のように秋元康の目があまり行き届かないところでも、本来は、モノゴトが上手く動くことが望ましいです。しかし、上手く行っていないのが現実だと、私は推測します。

望ましいのは、彼に次ぐNo.2のポジションに就く人材を育てることだと思います。しかしながら、カリスマ的な人物の存在によって成り立ってきたプロジェクトでは、難しいことです。そして、AKB48もそれに該当しているのだと思います。


AKB48には、海外の姉妹グループが2つできました。そして、3月20日には、福岡をベースとした姉妹グループ・HKTが、CDデビューを迎えます。秋元康のプロジェクトリーダー、そして、AKB48グループの曲の作詞家としての負荷は、更に増えると思います。彼が忙しい事によって起きる支障を最小限に抑えるためには、プロジェクトリーダー and/or 作詞家としての仕事を減らすことが必須になると思います。

外部からAKB48を眺めている私には、例えば、カップリング曲の詞を、ファンはそれほどは重要してないように見えます。また、彼が行なっている歌詞の最適化の“コスト効果”は、低いように見えます。しかしながら、作詞家としての彼は、作詞には手を抜きたくはないと思います。したがって、他の人に任せることの方が、却って、彼としては納得できると思います。

事実、派生ユニットである「Not Yet」の4枚目のシングル「西瓜BABY」においては、メンバーの北原里英に、typeBに収録されるカップリング曲(「guilty love」)の作詞を任しています。また、指原莉乃のセカンドシングルである「意気地なしマスカレード」においては、彼女にtypeAに収録されるカップリング曲(「ifの妄想」)の作詞を任しています。


今後もAKB48グループを存続させることできるか否かは、秋元康がどれだけの仕事を他人に任せることができるかにかかっているように思います。


−−以上−−

*1:2160時間とありますが、90日間(24 * 90 =2160)の取材という意味であり、2160時間の撮影がされたのではありません。