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人によっては「夏かし」と呼ばれているものです。

「なぞの転校生」(テレビ東京、金24:12〜)の11話まで(全12話)

「なぞの転校生」(テレビ東京、金24:12〜)の第11話までを観ました。全12話なので、最終回を残すだけになりました。


原作は眉村卓による「なぞの転校生」(1967年)です。1975年にNHK少年ドラマシリーズの一つとして放送されたことをご存じの方もいらっしゃると思います。この作品では主人公の岩田広一を演じていた高野浩幸が、今回は広一の父を演じています。

今作品では、企画・プロデュースを岩井俊二、監督を長澤雅彦を務めています。以前から40年経っていますので、人々のあり方が違いますし、スタッフも違いますので、かなりテイストが違う作品になっていると思います。今回は、映像がキレイでリリカルな作品です。簡単に言うならば、岩井俊二の作品に共通な雰囲気が漂っていると感じです。


第1、2話を見た時点においては、私のこのドラマに対する評価は高くありませんでした。その原因は、岩井俊二的な映像にも関わらず、広一(中村蒼)と彼の幼馴染である香川みどり(桜井美南)の共通の友人として、亀田兄弟的を彷彿させる男子生徒・大森健次郎(宮里駿)がいたからです。しかも、彼がお笑い担当であったために、ドラマの趣旨が分かりかねました。

しかし、このドラマから少し離れている間に、彼の登場時間は減り、ドラマとして分かり易くなりました。それから後は、何回も繰り返して見るほど、かなり気に入っています。


ドラマの筋だけに注目するならば、ありがちなラブストーリーです。高校2年になる幼馴染の2人は、あまりにも身近な関係であることが災いして、付き合うような関係には至っていません。とはいえ、部活が終わると、毎日当然のように一緒に帰宅しています。ドラマの始めも、二人が流れ星を見る場面からでした。

相手への好意をより自覚しているのは、みどりです。流れ星を見た際も、広一が自分のことを好きになって欲しいと願ったことが、後になって分かります。広一も、みどりのことは好きであり、彼女の気持ちには気づいているようす。しかし、彼は前に進むことによって、今までのあり方が崩れてしまうことを、望んでいないようでした。でも、この日を境に、違う意味で二人のあり方は変わっていきます。


それをもたらしたのは、広一の家族が住む集合住宅の隣人である老人の孫として現れた山沢典夫(本郷奏多)でした。彼は、この世界において普通の人が持っている知識に乏しいようです。それにもかかわらず、今までは知らなかった野球でホームランを打ってしまうなど、ちぐはぐな印象を広一に与えます。

次の日、驚いたことに山沢典夫は、広一とみどりのクラスに転校生として現れます。学校における彼の発言や行動も、やはり変です。広一は、違和感と戸惑いを感じるのですが、気のいい彼は、山沢典夫の面倒を見ます。そして、広一のそばにいる みどりも、彼と交流を始めます。

山沢典夫は、クラスに現れないことも、稀ではありません。このことが学校から容認されていることを、クラスメートが不満に感じるレベルです。それにもかかわらず、みどりは、典夫の異質感に惹かれるものを感じ始めます。広一も、みどりの気持ちが徐々に自分から離れ、典夫に移っていくことを感じます。


このように記載すると、どこでもあるような陳腐なラブストーリーのように見えるかもしれません。しかし、このドラマが単なるラブストーリーにならないのは、典夫が別の世界の住人だからです。

典夫が住んでいたD8という世界は、広一達が住むD12と同時に存在するパラレルワールドでした。D8は放射能のようなもので汚染されて、住むことが不可能になりつつありました。このため、D8を支配する王家が移住先として決めたのが、D12でした。


典夫は、王家に仕えるヒューマノイドでした。彼は、王家が移住するための環境を整えるための先発隊として、D12に送り込まれたのでした。彼がクラスからいなくなるのは、受けのために働く手下を作るためでした。

彼が手下を作るために使ったのは、スマートフォンに似たモノリスというツールでした。これを使うと、人間の意志を操れるなど、非常に高度なことができるようでした。実は、広一の隣人の老人を、自分の祖父のように仕立てて、操っていたことも、モノリスの力によってでした。


彼が老人の家を王家の拠点とした理由の一つは、広一が王家の姫・アスカ(杉咲 花)の婚約者・ナギサの“アイデンティカ”であり、広一の妹がアスカの“アイデンティカ”であったからでした。“アイデンティカ”とは、異なる世界に存在する、同一性のある存在です。なお、ナギサも広一の妹も、それぞれ、D8における戦争と、交通事故で既に死んでいます。

やがて、拠点に数人の王家の人間が到着します。その中には、アスカと、彼女の祖母である王妃(りりィ)がいました。瀕死であった王妃には、DNAの修復手術が行われました。その手術は成功しますが、モノリスの力を大量に消費してしまいました。このため、被曝をしたアスカやお付の者(アゼガミ、ズズシロ)を回復されることができなくなり、彼らの寿命は限られたものになってしまいます。


アスカは典夫の話を聞いて学校に興味を持ち、広一たちのクラスに編入します。彼女は王妃であり、自分の感覚に基づいて行動するので、クラスでは浮いてしまいます。このため、典夫以上に、広一に迷惑をかけます。

それにもかかわらず、広一は、彼女の面倒を見ます。彼女が広一の家に遊びに行くと、両親に気に入られ、泊まりたいという要望も認められるようになります。彼女のあり方はこの世界では異質なのですが、容認されるような徳があるようです。


アスカは、みどりから、学校は勉強をするためだけのところではなく、友達を作るところでもあることを教わります。このため、彼女はみどりと友達になりたいと考えるようになり、彼女をピクニックに誘います。ピクニックは、様態が回復した王女を楽しませるためでした。当然のことながら、広一と典夫も参加することになります。

どこかの公園で行われたと思われるピクニックでは、誰もが楽しげであり、幸せな時間が流れました。お付のものには口うるさかった王妃ですが、みどりが持参した料理は、気に入ったようです。「アスカもこれくらいできないとね。」と孫をからかったりもします。

近くで少女が行っていたシャボン玉にアスカが興味を持ったので、広一が売店から調達してきます。アスカは始めは上手くいかないのですが、みどりに教わって、マスターします。そして、広一が作る大きなシャボン玉を楽しそうに眺めます。典夫は、アスカに付き添います。王妃は、少し遠くから、4人の姿を楽しげに眺めます。


しかし、楽しい場面は急に暗転します。王妃が、男に包丁で刺されてしまったからです。典夫は、逃げた男を追い詰めるのですが、その男はモノリスを使って自らを消滅させてしまいます。このため、彼が何者であるかは、分かりませんでした。

王妃は本拠地に運ばれます。典夫は医者を手配しようとするのですが、王妃はこれを拒みます。モノリスの力により一時的に生気を取り戻した王妃は、彼女たちが何者であるかと、この世界に来た理由を、広一とみどりに、話し始めます。

王妃は、最後に、広一が王家を継ぐ権利があることを伝え、決断を彼に任せます。そして、この世でやるべきことを果たした彼女は、息を引き取ります。アスカは、広一に、統べる民がなくなった王家を継承する必要がないと話します。さらに、自分が間もなく死ぬことも、伝えます。


老人の家を辞した広一とみどりは、彼女の家に向かいます。途中で、みどりは空に綺麗な月があることに気が付き、二人で流れ星を見た場所であることを思い出します。

広一はみどりを後ろから抱きしめ、好きであることを伝えます。抱きしめられることと拒まないことにより、みどりはこれに応えます。二人共に、新たな段階に進むことを望んだのは、居るのが当然であると思っていた人が、あっけなく存在しなくなることを、実感したからだと思います。


このあと、月が映しだされ、半月よりは少し太ったものであったことがわかります。この月は、アスカが家の中から観ていたものでした。この後に行われたアスカと典夫のやりとりは、秀逸でした。

ここでは、最後のところだけを記することにします。残念ながら、文字にすると、ワガママな姫様という印象しか感じられないと思います。しかしながら、実際の場面を見ると、二人の関係が良好であり、しかも、信頼関係があることがよく分かります。お付の者が典夫のことを見下していたのとは、対照的です。

アスカ「決めた。」
典夫「何をですか?」
アスカ「明日から毎日、好きなことをする。」
典夫「好きなこと?今までも、ずっと、そうだったのでは。」
アスカ「うるさい。」
典夫「…。」


――以上――