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人によっては「夏かし」と呼ばれているものです。

「AKB人気は本当か 新世代の音楽チャート作れ」(日経)という記事に、書く必要があったと思うことを書いておく

「AKB人気は本当か 新世代の音楽チャート作れ」という日本経済新聞の記事がありました。私はこの記事に違和感を感じました。この違和感について数日考えた結論は、その源泉は、この記事は「AKB人気は本当か?」とタイトルに含めながらも、AKB48の人気のことは前振りに使っているだけで、具体的に答えていないということでした。

その代わりに、記事で書かれていることは、ビルボードJapanにおける評価方法が変更されたことです。ビルボードJapanは、今までは3要素(ラジオの再生回数、CD販売、iTunesストアの販売)のポイントを総合してランキングを作っていましたが、最近、もう2要素(CDレンタル、ツイッター)増やしました。評価要素が増えたからといって、改善されるとは限りません。これについて、日経記事は具体的な評価を行っていないようです。

タイトルにAKBと入れただけで、ネット上で公開されたこの記事へのアクセスが増えたのなならば、きっとAKB48には人気があるのでしょうから、もう答えは出たのだと思います。ただ…、ビルボードJapan の名前を出すよりも「AKB」をタイトルに入れたほうがプラスになるというのが この記者さんの判断ならは、ビルボードJapanを知るものとしては、少し悲しいです。


以下、この日経記事に書いたほうが良かったと、私が考えることを記載します。

日経記事の前振りは、2013年の年間オリコンチャートのトップ5でした。トップ5を簡単に記載すると、1位から4位までをAKB48の曲が占め、5位にはEXILEの曲が入っています。日経記事ではビルボードJapanにおける年間順位が記載されていなかったので、ここではそれも含めて表にします。この他に、iTunesにおける年間順位も記します。

順位(オリコン アーティスト 順位(ビルボードJapan) 順位(itunes
さよならクロール AKB48 2 83
恋するフォーチュンクッキー AKB48 1 3
ハート・エレキ AKB48 10 圏外
So long ! AKB48 6 69
EXILE PRIDE 〜こんな世界を愛するため〜 EXILE 40 47

ビルボードJapanの年間1、2位も、AKB48の曲です。1位は「恋するフォーチュンクッキー」、2位が「さよならクロール」であり、オリコンとは順序が逆になっています。

この違いを作ったのは、デジタルダウンロード販売における、絶大な人気の差です。iTunesの順位では、「恋するフォーチュンクッキー」が3位なのに対して、「さよならクロール」が83位だからです。これだけの順位差があれば、CD売り上げ(オリコン)で50万枚弱の差があっても、逆転ができます。

恋するフォーチュンクッキー」は、特典が付いていないiTunesでも3位ですから、一般層にも人気があることが分かります。これに対して、「さよならクロール」は特典がないとあまり売れないので、一般層の人気は、芳しくないと推測します。

Exileの「EXILE PRIDE 〜こんな世界を愛するため〜」もiTunesでは47位なので、特典がないと売れなかった曲と見なせると思います。実は、この曲のCDには、とんでもないオマケが着いていました。ライブチケット付CDだったのです。AKB48より汚い...というタイトルの記事を見かけた人方もいらっしゃると思います。

この5曲の人気は、iTunesの順位を見れば明らかです。極端な言い方を言えば、「恋するフォーチュンクッキー」しか人気がなかったとということです。
今までの記載によって、日本経済新聞の記事タイトルの前半「AKB人気は本当か」については、決着がついたと思います。AKB48の曲にはCDの売上げに見合うほど人気がない曲が多いが、人気がある曲もあるということです。前半の部分が決着がついたので、日経記事タイトルの後半である「新世代の音楽チャート作れ」に関することを記載します。


さて、ここまでのことから、曲が人気があるかどうかの評価は、itunesのようなダウンロード販売のランキングを見ればいいと考える人もいると思います。しかしながら、ジャニーズ系のようにダウンロードをしないアーティストもいるので、ダウンロード販売のランキングだけでは、全ての曲を網羅できません。逆に、CDを発売をせずに、ダウンロードしかしない曲もあります。このような曲は、CD発売した曲よりも、ダウンロード販売のランキングにおいて有利です。同様の意味では、ジャニーズ系は、CD販売において有利なのかもしれません。

その他、演歌歌手のように、ファン層がダウンロード販売を利用する割合が少ないと思われるアーティストもいます。これらのことを考えると、CD販売とダンロード販売の両方を、評価要素にすることが望ましいです。ビルボードJapan では、この他にラジオの再生回数も評価要素にしていました(合計3要素)。


上にも書きましたように、去年の12月から、2つの要素がビルボードJapanの評価要素に加わりました。CDレンタルと、ツイッターです。日経の記事によると、この追加に関するもっともらしい理由があるようです。でも、実際にこの2要素を加えたことにより、より良い音楽ランキングになるかは、別の話になります。

このことを検証する前に、良い音楽ランキングとは何かについて考えなくてはなりません。これについては、人によって意見が違うと思います。でも、日経記事が望ましいものイメージとしてあげている昔のテレビの音楽番組「ザ・ベストテン」のチャートと、現在のオリコンチャートと比べてみれば、ある程度の人が賛同してくれる“良い音楽ランキング”が分かってくると思います。

現在のオリコンチャートのトップ10が、「ザ・ベストテン」のベスト10と違うのは、毎週、大きく入れ替わるということです。「ザ・ベストテン」の時代は、週間トップ10を把握していることは、役に立ちました。しかし、現在はほとんど無意味です。次週にはトップ10から外れる曲が大部分だからです。

週によっては、先週と曲が総入れ替えになっている場合があります。このようなことが起きるようになったのは、曲の評価が、初週の週間ランキングにおける順位によってされることが、業界における共通認識になったためだと推測します。これに対処するために、アーティストのファンは、初週にCDの購入を集中させるようになりました。結果として、第2週以降の売上げは、かなり落ちます。


以下に、今年の3月10日から16日の週におけるトップ10(オリコン)を表に示します。日経記事では、この週におけるトップ10を、新しい基準で評価されたビルボードJapanのチャートを説明するために、使っているからです。それぞれの曲について、次週、次々週の順位も示します。

順位 アーティスト 発売日 順位(次週) 順位(次々週)
1 桜、みんなで食べた HKT48 2014年3月12日 6 14
2 君がいない、あの日から… Acid Black Cherry 2014年3月11日 13 21
3 サクラあっぱれーしょん でんぱ組.inc 2014年3月12日 21 35
4 With You/With Me 9nine 2014年3月12日 44 圏外
5 光のシグナル Kis−My−Ft2 2014年3月5日 11 12
6 カリフォルニー ケツメイシ 2014年3月12日 29 39
7 STARTING OVER 青山☆聖ハチャメチャハイスクール 2014年3月11日 圏外 圏外
8 前しか向かねえ AKB48 2014年2月26日 18 18
9 The World’s End 堀江由衣 2014年3月12日 49 圏外
10 パラレル KEYTALK 2014年3月12日 圏外 圏外


この週に発売された曲は、トップ10に8曲入りました。その中で、次週もトップ10に入った曲は、この週1位である「桜、みんなで食べた」(HKT48)だけでした。それから、7位の「STARTING OVER」(青山☆聖ハチャメチャハイスクール)と、10位の「パラレル」(KEYTALK)は、トップ50からも外れました。次々週では、さらに2曲がトップ50から外れました。

この週が初週ではない2曲は、「桜、みんなで食べた」と同様に、2週以上連続でトップ10に入ったことになります。先週発売の「光のシグナル」(Kis−My−Ft2)は2週連続、先々週発売の「前しか向かねえ」(AKB48)は3週連続で、トップ10に入りました。

この3曲は、AKB48系(HKT48AKB48)、または、ジャニーズ系(kis-my-ft2)のアーティストのものです。双方の共通点は、大きなファン層を持っていることです。この2系列に属しているアーティストのように、固定ファンがファンが多くないと、初週から複数週連続でトップ10に入ることは難しいことが、現状です。結果として、曲が素晴らしいから複数週連続でトップ10に入るということは、かなり少くなりました。

これらの認識のもとに考えると、良い音楽ランキングとは、素晴らしい曲ならば、多くのファンを持つアーティストの曲でなくても、複数週に渡ってトップ10に入ることができるものだというという結論に、私は至りました。いかがでしょうか?


このことを踏まえて、注目している週(3月10日から16日の週)におけるビルボードJapanのトップ10を、見ていただきたいと思います。
日経の記事には、トップ10の曲について、5つの評価要素における順位を記載しています。これに、前週と次週におけるビルボードJapanの順位を加えて、以下に記載します。

順位 曲名 アーティスト名 CD発売日 ラジオ順位 CD販売順位(オリコン ネット配信順位 レンタル順位 ツイッター順位 順位(前週) 順位(次週)
桜、みんなで食べた HKT48 2014年3月12日 96 20 発売前 13
ray BUMP OF CHICKEN 配信限定 なし なし 11 3
君がいない、あの日から… Acid Black Cherry 2014年3月11日 181 14 10 発売前 27
サクラあっぱれーしょん でんぱ組.Inc 2014年3月12日 74   11 発売前 46
カリフォルニー ケツメイシ 2014年3月12日 29 29 29 7
春風 Rihwa 2014年2月26日 33 18 6 2
絶対的な関係 赤い公園 2014年3月12日 20 27 52 11 27 15
光のシグナル Kis−My−Ft2 2014年3月5日 50 なし 1 18
東京 wacci 2014/3/5 155 199   59 5 20
10 With You/With Me 9nine 2014年3月12日 26 59 79 13 68 58

オリコン共にトップ10に入った曲は6曲でした。1位は「桜、みんなで食べた」であり、オリコンと共通でした。ビルボードJapanだけトップ10にはいった4曲の中には、配信限定の曲である「ray」(BUMP OF CHICKEN)が入っています。

前週から連続でトップ10に入った曲は3曲であり、翌週も連続でトップに入った曲は3曲です。「春風」(Rihwa)は両者に入っていますので、連続でトップ10に入った曲は、5曲になります(以下、B連続曲10と呼びます)。「春風」の他は、「ray」、「カリフォルニー」、「光のシグナル」、「東京」(wacci)です。

B連続曲10の5曲中で、オリコンの場合の3曲と共通なのは、「光のシグナル」です。残りの4曲は、いずれもAKB48系/ジャニーズ系ではありません。


5つの評価要素におけるトップ10曲の幾つが、B連続曲10になっているかを数えると、CD販売(オリコン)とレンタルが2曲であり、他の3つの評価要素(ラジオ、ネット配信、ツイッター)は3曲です。1曲の違いがありますのが、それをもたらしたのは、配信限定である「ray」ですので、大きな違いがないと見なせると思います。しかし、CD販売という評価要素だけでは、ヒット曲を見逃してしまうことを示す事例にはなりました。

これより大きな問題は、CD販売(オリコン)における3位の曲(「サクラあっぱれーしょん」)と4位の曲(「With You/With Me」)に関してです。この2曲は、CD販売(オリコン)の順位が高いことに力を得て、ビルボードJapanにおいて、それぞれ4位と10位になりました。しかし、次週は大きく順位を落としてしまいました(46位、58位)。なお、この2曲はオリコンチャートでも、前者は3位から21位、後者は4位から44位と、大きく順位を落としています。つまり、この2曲の高い順位は、良い音楽ランキングのためには、妨げになったということです。このことから考えると、5つの評価要素の中で有効性が低いものを決めるならば、CD販売順位(オリコン)ということなります。

念の為に小文字で書いておきますが、CD販売順位はオリコンの他に、サウンドスキャンも発表しています。“一番信頼がおけない”と上の文脈で評したのは、オリコンのものだということに、ご留意下さい。サウンドスキャンのオリコンとの違いは、限定流通盤の枚数をカウントしていないことです。順位にどのような違いが出るかというと、例えば、オリコンではミリオンセラーになり、年間ランキングでは5位であったEXILEの「EXILE PRIDE 〜こんな世界を愛するため〜」の売り上げは、サウンドスキャンでは8万枚でした(ソース:日経エンターテイメント2014年1月号)。順位についてはわかりませんが、かなり低いはずです。なお、オリコンでは1位と2位であった「さよならクロール」と「恋するフォーチュンクッキー」は、サウンドスキャンでは、順位が1位づつ低くなるだけでした。

-「週間 CDソフト TOP20

このことから、ビルボードJapanをより良くするためには、評価要素からCD販売(オリコン)を外すという方策があります。しかしながら、現実には、そのようなことは不可能だと思います。


最後に、CDレンタルとツイッターを評価要素に加えたことの是非について、意見を書きます。CDレンタルとツイッターは、極めて良い評価要素だとは、私は思いません。でも、大きなマイナス要素では、ありませんでした。このため、CD販売(オリコン)の相対的な影響を減少させるという意味では、有用です。これらのことから、2要素を加えたことは、プラスに評価できるというのが、私の結論です。


−−−以上−−−