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人によっては「夏かし」と呼ばれているものです。

「逆転力〜ピンチを待て〜」(指原莉乃)[講談社]の紹介と、解説と補足のようなもの

1週間前のことになりますが、講談社から「逆転力〜ピンチを待て〜」(指原莉乃[HKT48])が発売されました(2014年8月11日発売)。読んだ人の多くに好評のようです。私としても、面白かったです。


この本は、講談社AKB48新書の最初の本として発売されました。しかし、本屋では、講談社Mookとして扱われているようです。

売れ行きは、新書としては好調のようです。初版は5万部だったのですが、発売から3日後である14日の時点で、2万部の重刷が決まりました。twitterでは、何軒の本屋を探したが見つからなかったとか、ようやく見つけたというツブヤキを見かけます。講談社は、この状況に迅速に対応したのだと思います。

なお、amazonの総合ランキングでは、この本は、7日目の今日(2014年8月17日)までトップ10に入り続けています。


この本には、指原莉乃がどのような考え方を持って歩んできたかが書かれています。発行している講談社は、「指原莉乃が語る“逆転”の人生論」としていますが、一般的な人生論とは違って、押し付けがましさがありません。

現時点では、講談社が想定していたよりも若い年代に読まれているようです。twitterを「逆転力」で検索すると、この本で、夏休みの読書感想文を書こうとしている学生がいることが分かります。

念の為に書いておくと、この本は高い年代の人にも読まれています。例えば、田原総一朗さんです。


いわゆる人生論は、ある程度の年代以上の人によって書かれることがほとんどです。それらの人達は、社会的な成功者です。しかし、若い年代にとっては、遠い存在の人がほとんどです。

そのような人達の人生論で語られる時代は、現代でないことが多いです。最近は、時代の流れが早いですから、それらの時代と現代は、価値観や社会のあり方がかなり違います。このため、語られていることが、若い人にはストンと落ちないことが少なくないと思います。


どんな人でも、頻度はともかくとして、役に立つようなことを言うことがあります。しかし、ある程度の実績を上げている人の言葉以外は、参考にされることは稀だと思います。このため、社会的に成功した人の言葉が語られることが多いです。人生論が傾聴に値すると見なされている人達も同様です。

指原莉乃は21歳ですが、かなり濃い人生を送ってきています。このため、人生論として語るエピソードは豊富です。それだけではなく、彼女の知名度は高く、特に若い年代においては絶大です。このため、通常の人生論を敬遠したがる傾向がある若い年代にも、彼女の人生論は、身近なものとして受け入れられる可能性があります。この本を企画した講談社の人は、目の付け所が良かったと思います。


「逆転力〜ピンチを待て〜」というタイトルによって多くの人が思い浮かべる指原莉乃のピンチは、週刊文春による元カレ報道(2011年6月)によって、AKB48から姉妹グループであるHKT48(拠点:福岡市)へ異動になったことだと思います。

その後に起きた逆転劇は、2つのことです。一つは、HKT48への貢献が高く評価されて、彼女がHKT48劇場支配人を兼任することになったことです(2013年4月28日任命)。もちろん、メンバーが支配人を兼任することは、AKB48グループでは初めてです。もう一つは、去年(2013年)の6月に行われた第5回AKB48選抜総選挙において、1位になったことです。姉妹グループのメンバーが1位になることも、研究生出身のメンバーが1位になったことも初めてでした。なお、前年(2012年)のAKB48選抜総選挙では、彼女は4位でした。


上記のピンチと、逆転のこと(特に2番目)は知っているので、この本を読む必要はないと考える人が少なくないようです。しかしながら、それは間違えです。このことは第4章に書かれているだけであり、この本の一部に過ぎないからです。

第1章から第3章までは、彼女が第4回選抜総選挙(2012年)において4位になるまでのことが書かれています。そして、第5章では、HKT48劇場支配人*1になってから、彼女が果たしたことが書かれています。

この本は9章までありますが、後半の4章については、ここではふれません。各章のタイトルは、記事の最後に記載します。


まず、指原莉乃が4位になるまでのことを簡単に解説します。大分市で生まれた彼女は、モーニング娘などのアイドルが好きな少女でした。彼女は九州の女ヲタとしては、柏木由紀鹿児島県出身、現・AKB48)と共に有名だったようです。しかし、指原莉乃AKB48に入ったのは、アイドル好きであるからだけではありません。あることにより、彼女の中学生時代はピンチになっていたからです。このため、新しい環境で再出発することも、AKB48に入った大きな理由になっています。ここまでが第1章に該当します。もちろん、本ではもっと詳しく書いてあります。

しかしながら、AKB48に入って直ぐに逆転劇が生まれたけではありませんでした。彼女は第5期のメンバーとして、AKB48に加入したからです。AKB48の正規メンバーの定員は48人(16人 x 3)であり、既に第3期までのメンバーで埋まっていました。このため、彼女のAKB48時代は、正規メンバーではない研究生として始まりました。なお、彼女より1学年上であった柏木由紀は、1年前にAKB48に入りました。彼女は第3期であったので、初めから正規メンバーでした。


第2章と第3章には、研究生であった彼女が4位になるまでを書かれています。アイドルとしては極めて容姿が優れているわけでは彼女が、どのように活路を見出して行ったかが、この2章で分かります。この部分は、学生や新入社員にとって興味深いものになると思います。

これに対して、第5章に書かれているHKT48劇場支配人としての指原莉乃の話は、会社の管理職や経営者にとって、興味深いと思います。21歳の女の子がHKT48劇場支配人であることを知った人の中には、名目だけの役職だと推測する人がいるようです。しかしながら、それは全くの間違えです。実は、HKT48は、指原イズムを体現したものだからです。なお、HKT48の実務的なことは、もう一人の劇場支配人である尾崎充が担当しています。


HKT48は、AKB48の3番目の姉妹グループです。初めの姉妹グループが名古屋を拠点するSKE48、2番めの姉妹グループが大阪を拠点とするNMB48です。一般的に、二番煎じまでは成功する可能性がありますが、三番煎じはかなり厳しくなります。それにもかかわらず、NMB48までが軌道に乗ったのは、大きなマーケットがある大阪が拠点であったからです。しかし、その次に生まれたHKT48は、名古屋、大阪よりもマーケットが少ない福岡を拠点にしています。よほど上手くやらないと、失敗する可能性がありました。

SKE48NMB48には、AKB48グループファンの保守派によって、AKB48と同様であることを求められています。また、同様であっても大きな支障が起きないので、あえて別のことを行う必要はありませんでした。

SKE48にはダンスを特徴であると設定され、NMB48には吉本的なイメージがイメージが想定されました。しかし、これはあくまでもAKB48グループ内のキャラ付けです。例えば、一般のアイドルファンがダンスがグループとして思い浮かべるのは、SKE48ではないことが多いと思います(本では、他のグループについて、リスペクトを込めて紹介しています。)。

結果として、この3グループは、AKB48と同じパイを取り合うことになっていると思います。なお、パイの大きさは、この2グループができることにより少し大きくなっています。


しかし、3番目の姉妹グループであるHKT48には、すんなりと分けてもらえるパイは、ほんの一部だけでした。そして、指原莉乃が異動してくる前のHKKT48は、福岡県で1番の女性アイドルグループではありませんでした。このため、HKT48によってAKB48グループのパイは、さほど大きくなっていませんでした。

当時のHKT48ファンがどの程度の認識を持っていたかは分かりませんが、HKT48は、実際にはかなりピンチであったと思います。これは、指原莉乃AKB48に入ったけれど、48人枠が既に埋まっていたのと同じような状況です。


ピンチであったHKT48においても、指原莉乃の逆転力が発揮されます。彼女はAKB48における経験やノウハウをメンバーに伝えるだけではなく、HKT48の広告塔として十分以上の活躍をしました。それだけではなく、彼女がMCを務めたHKT48の冠番組が成功したことにより、HKT48は、九州以外でもかなりのファンを獲得することができました。

これらのことにより、HKT48のCDデビュー(2013年3月20日)は成功しました。この貢献が評価されて、今までの劇場支配人であった尾崎充に加えて、彼女も劇場支配人の一人になりました。


第5章の大部分には、今年の1月から3月に行われた初めての九州ツアー(「HKT48 九州7県ツアー〜可愛い子には旅をさせよ〜」)に関することが書かれています。これは、指原莉乃が初めから企画に携わった最初のツアーでした。なお、このツアーと、4月から7月の行われたツアー(「可愛い子にはもっと旅をさせよ」)*2が大成功した結果、6月に行われた第6回AKB48選抜総選挙において、HKT48は大躍進しました。

九州ツアーは、今までのAKB48グループのツアーとはかなり違うものでした。その独自色をもたらしたのは指原莉乃の考え方でした。これを基にして、観客を楽しませることを最優先にして、コンサートは企画されました。

私の見解では、AKB48は王道の女性アイドルグループではありません。AKB48選抜総選挙を行ったり、握手会を売り物にした結果、王道からずれてしまったような気がするのです。コンサートについても、歌われる曲が秋元康作曲の曲に限られているなど、特殊なあり方があります。そのあり方を、SKE48NMB48も踏襲しましたが、HKT48はそのような選択はしませんでした。

このツアーは、AKB48グループのファンではない観客も楽しむことができるようなものでした。これは、他のAKB48グループのコンサートが、観客は自らのファンであるという前提の基に作られていることと大きく違います。

このツアーを通じて、HKT48は新たなファンを獲得できたようです。他のAKB48グループのコンサートではファンはあまり増えないようなので、大きく違います。HKT48AKB48グループのファンのパイを重視するよりも、外部の人をファンにすることを重要視して、それが成功したということだと思います。このツアーについての詳しいことが、本に書かれています。


第五章には、HKT48の他の独自性についても書かれています。それは、特定のメンバーだけに絞って売り出さないようにすることです。以前のAKB48には、前田システムと称されたものがありました。これは、前田敦子を売り出すために、彼女に機会を集中させるものでした。また、SKE48松井珠理奈松井玲奈NMB48山本彩渡辺美優紀を前面に出しています。これに対して、HKT48ではできるだけ多くのメンバーに機会を与えています。

例えば、この本の発売記念トークイベント(放送:ニコニコ動画)には、ゲストとして田中菜津美HKT48)が呼ばれました。ところが、彼女は、HKT48の最新のシングル(3枚目)まで、一度も選抜メンバー(16人枠)に入っていないメンバーです。また、今年行われたAKB48選抜総選挙においても、80人枠に入れませんでした。

他のグループでしたらば、おそらく、人気メンバーが呼ばれたと思います。これに対して、HKT48では、現時点の人気にかかわらず、十分に役目を果たすことができるメンバーが選ばれます。そして、田中菜津美は十分に役目を果たしたと私は思います。




最後に、この本の目次(章レベル)を記載します。

  1. ピンチが背中を押してくれる
  2. 自分だけの武器を見つける
  3. 振られたキャラは否定せず受け入れる
  4. 人生最大のピンチと”逆転”の思考法
  5. みんなで勝つ”ための戦術 ―指原流プロデュース術
  6. 対人関係に必要なのは”度胸”と”客観視”  ―指原流コミュニケーション術
  7. ”アンチ”も力に変える ―指原流仕事術
  8. ”切り替え”と”思い込み”で逆転できる ―指原流思考術
  9. 逆転力で楽しく生きる

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−−以上−−

*1:尾崎充とのW支配人体制

*2:4月末から5月初めは、幕張、大阪、福岡。7月中旬に福岡。