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人によっては「夏かし」と呼ばれているものです。

熊本地震をどう捉えるべきかについて(中越地震との比較)

最大震度7を記録した熊本地震の前震(4/14 21:26、M6.5)から半月が経ちました。亡くなられた方のご冥福を祈るとともに、できるだけ早い復興を願います。


有感地震(震度1以上)は、本震があった4/16には202回ありました。でも、ここ1週間は24~52回の範囲に収まっています。

ゴールデンウイークの初日(4/29)には、10日ぶりに震度5弱以上の地震がありました。しかしながら、最大震度5強由布市湯布院町川上(大分県)で観測したこの地震は、珍しいものです(M4.5、深さ:7km)。最大震度は震度5強ですが、震度5弱と震度4の観測点がありません。そして、震度3を観測した観測点も、2箇所だけです。
http://www.jma.go.jp/jp/quake/20160429151344495-291509.html


熊本地震は今までにないようなタイプであり、それがこの地震を捉えにくしています。マスコミは、有感地震の累積回数を強調してこの地震を報道していますが、他の地震と単純に比べると、少し的はずれな議論になりえる可能性があると思います。ちなみに、4/29(祝)までの累積は、1061回になりました。

この地震の特徴を2つだけ記載するならば、地震震源が広範囲に渡ることと、震度3以下の地震が多いことです。このことを、同じく直下型地震である中越地震(本震:2014年10月23日)と比べて見ます。

通常の直下型地震を1つの円錐に例えると、熊本地震複数の円錐から構成されていると私は理解しています。円錐は、高さと、底面を規定する直径で定義される立体です。マスコミの報道を見ると、複数の円錐の底面面積を足し合わせた値から直径を計算して、それに合わせた高さを想定しているように感じます。


まず、震源が広範囲であることについて述べます。中越地震震源新潟県中越地方だけでした。2014年に限定して、震度5弱以上の地震を、以下の気象庁のデータベースで検索すると、20件ありました。
www.data.jma.go.jp


熊本地震震源は、熊本県熊本地方、熊本県阿蘇地方、大分県中部の3つに大別できます。現在にまで起きた震度5弱以上の地震(計:18回)の内訳は、13:3:2です。熊本県熊本地方における震源も広い範囲に渡っています。

上記データベースの検索結果が提供した震源マップを以下に表します。なお、検索の時点では、由布市に最大震度5強をもたらした上記地震(29日)は含まれていませんでした。
 


次に最大震度の回数による分布を比較します。

まず、最大震度5弱以上の回数はほとんど違いません。上記のように、中越地震は20回(震度7:1、震度6強:2、震度6弱震度5強:8、震度5弱:7)であり、熊本地震は18回(震度7:2、震度6強:2、震度6弱:3、震度5強:4、震度5弱:7)です。

ところが、以下の図によって分かるように、最大震度4以下の回数に大きな違いがあります。熊本地震の方がかなり多いのです。


さて、震度の大きい地震は、震度が小さい地震に比べると、有感地震(震度1以上)を観測する地域が広い傾向があります。例えば、震度7であった本震(4月16日)は、遠方である関東のほとんど都県(栃木県を除く)にさえ、有感地震をもたらしています。
http://www.jma.go.jp/jp/quake/20160416014014395-160125.html

これに対して、例えば、最大震度1の地震は、影響をもたらす範囲が狭いです。例えば、4月27日に発生した最大震度1の地震震源熊本県)を調べてみると、有感地震を観測した観測点が1箇所であるものが、約半数を占めていました。

したがって、有感地震が1000回を超えていても、その3割が震度1ですから、おのおのの観測点で観測された有感地震の数は、そんなには多くないはずです。しかも、震源が集中していないので、その傾向は強まるはずです。


具体的な資料を作ることを試みました。でも、それに必要なデータは、気象庁のデータベースでは得ることができませんでした。このデータベースでは、観測点と震度の下限を指定して検索ができるのですが、100件までしか表示されず、しかも、幾つの地震が該当するかが表示されないからです。

そこで、「揺れる日本列島」というサイトを利用することにしました。
jisin.jpn.org

このサイトでは、各観測点において各年に観測した地震の回数を震度毎に記載しています。そして、全国および各都道府県を対象として、ランキングを掲載しています(震度1以上、震度3以上)。なお、資料を作った時点において利用できたデータは、4月23日まででした。

今回は震度3以上のランキングを使います。何故ならば、熊本地震においては、震度1と2の地震についての情報が、気象庁から発表されていない時期があったからです。このため、震度1以上のランキングを作るために適切な粗データを、得られていない可能性が高いです。
http://jisin.jpn.org/rank10Area2016.html


以下に、全国のランキングにおける、トップ5(全て熊本県)の観測点と、トップ60に入っている他県の観測点について、観測回数(震度3以上)を表にします。各震度の内訳は、上記ページを参照ください。なお、該当期間における、震度3以上の地震の総数(熊本地震)は、286回です。

トップは、宇城市豊野町の121回でした。この回数は総数の約42%です。震度1以上までを集計対象にするならば、この割合はさらに減るはずです。

宇城市豊野町に続くのが、熊本西区春日(熊本県)の100回[約35%]と、宇城市松橋町熊本県)82回[約27%]です。熊本県における50位の観測点では約20回[約7.0%]です。熊本県の観測点は約100箇所なので、この値を、熊本県を代表する値として使えると思います。

この割合は7.0%と低いので、累積で1000回以上の有感地震があったとしても、その全てが熊本県全域に影響していると見なすことは、明らかに間違えであることが分かります。


気象庁は累積回数を強調して、警戒を怠らないようにすることを勧めています。そして、マスコミは気象庁の趣旨に沿った報道をしています。実際、これから大きな被害もたらす地震が起きる可能性は否定できません。

このようなあり方は。被害を最小に抑えるためには妥当なやり方なのだと思います。特に、公開の地震についてはそう思います。関東大震災レベルの大地震が起こる可能性が何十年に渡って警鐘されており、小規模の地震が稀ではない関東地方とは違うからです。

でも、モノゴトを成功させるためには、厳しく叱咤激励することと共に、優しく励ますことも必要です。前者の役目は、気象庁が担っています。

後者が必要なのは、ナーバスになりすぎて、心的にマイナスになってしまう人がいるからです。今回の情報は、そのような人における過度の心配を解消させるために、有効かもしれません。


熊本県以外についても見ていきます。37位までは全て熊本県の観測点です。38位は、大分県の観測点である、竹田市荻町の(32回)です。これに続くのが、由布市湯布院町川上(23回)、別府市鶴見の(20回)です。この後に、長崎県、宮崎県、福岡県の観測点が続きます。

大分県のトップである竹田市荻町の回数は、熊本県のトップの1/4です。そして、大分県の3位が熊本県の50位くらいに対応します。


以下の記事を読むと、マスコミの報道が熊本県に偏っていることに、不満をもっている大分県の方もいらっしゃるように感じます。
headlines.yahoo.co.jp

確かに私もどんなものかと思うことはあります。例えば、久しぶりの震度5強由布市で観測した日の晩に観たニュース番組で感じました。

それらの番組では、この地震よりも、熊本県にやってきたボランティアについての報道が先でした。そして、報道時間にもかなり差がありました。でも、上で示した違いを見るならば、仕方がないことかもしれないとも思います。

ともあれ、上記の報道や翌日のネットニュースによると、この地震による大きな被害はなかったようでしたので、私は安心しました。なお、観光地における風評被害の可能性を考慮して、被害を大きく強調しない報道が、望ましいと思います。


ーー以上ーー